島田・井上玩具煙火 高級手持ち花火を販売
2020年6月22日 05時00分 (6月22日 05時01分更新)
県内で唯一、手持ち花火を製造販売する島田市中河町の「井上玩具煙火」が、高級手持ち花火「義助(よしすけ)」を発売している。新型コロナウイルス感染拡大による自粛ムードが業界にも大打撃を与える中、井上吉勝社長(57)は「この花火が、庭先に家族全員が集まり絆を深めていたかつての姿を取り戻すきっかけになってほしい」と話す。 (大橋貴史)
花火の名は、島田市を拠点に室町時代から江戸後期まで代々続いた刀鍛冶「義助」から名付けた。刀の原材料の黒色火薬や鉄が、花火と同じであることに着想を得た。
江戸時代のかんざしや化粧道具のような一見、花火とは見えないおしゃれな見た目が特徴だ。ヤナギのように細長い火花、ホタルが飛ぶような光の筋など燃え方の異なる計五種類を一箱に封入。いずれも同社の職人によって一本一本手作りで仕上げている。
新作花火の開発を担ったのは、息子の慶彦さん(28)。「一本を味わうようにして楽しむ花火」をコンセプトに二年がかりで開発を進めた。
おもちゃとして扱われる手持ち花火の市場は近年、中国やインドネシアなどの安価な商品が席巻している。同社のように一九二六(昭和元)年創業の老舗でも例外ではなく苦境に立たされていた。「近所から苦情が来る」などの理由で大きな音の出る花火は好まれなくなり、おもちゃ花火の需要も減っていった。
追い打ちをかけるようにコロナ禍による自粛で、ゴールデンウイークから始まる商戦にも影響が出た。六月一日に県内を含む全国一斉に行われたサプライズ花火の打ち上げを見て、慶彦さんは「花火はみんなを元気づけるものだ」と決意を新たにした。
完全受注制のため、注文から商品化まで約二週間必要。五本入り三千円(税別)。インターネットの専用ページや電話で受け付けている。(問)井上玩具煙火=0547(37)2460
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