昨年は大きな震災がたくさん起こりました。震災に被災された方々には心からお見舞い申しあげます。

毎年のように大規模な震災が起こる日本列島でビジネスをするには、震災が起こることを想定した事業計画が必要です。例えば、震災と共に必ず起こるのが通信障害です。

電話をすれば「現在、回線が大変混み合っております。しばらくたってから、お掛け直し下さい。」というアナウンスが流れます。

これは、災害時に電話をかける人が多いため、回線がパンクして公衆回線(PSTN)がダウンしてしまう前に公衆回線側で通信規制をかけるからです。

そして、電話の次につながりにくくなるのは、インターネットですよね。電話がつながらないとインターネットで通信しようとするのが人情で、被災地近辺だけでなく、日本全国からSNSや電子メールなどで連絡が行われます。そうなると、トラフィック過多による輻輳が起きてしまい、インターネットもつながらなくなります。

図に表すと上記のような状態になってしまいます。個人的な連絡であればと、電話やインターネットが回復するのを待てばよいですが、ビジネスですと何とか通信を行いたいというケースがあります。

拠点間が専用線でつながっている場合は、拠点間での通信が可能かもしれません。しかし、震災時はいるべき人が不在で、あるべきものがないことも想定しなければいけません。震災時に専用線が通信断になることも十分あり得ます。また、震災時でも社長や役員クラスといった決断ができる人が拠点にいないことも想定しなければいけません。

そういう時にお勧めしたいのが、ヤマハルーター「NVR700W」で構築する閉域LTE網です。NVR700Wは内蔵無線WAN(LTE/3G)を搭載し、IPsecにも対応したオールインワンVoIPルータです。

特徴は以下です。

  • 小型ONU対応
  • 多彩なVoIP機能
  • 内蔵無線WAN(LTE/3G)を搭載
  • RTXシリーズ各機能を搭載
  • 使いやすさを追求した新Web GUIを搭載

例えば、「NVR700W」は以下のように設置します。

簡単に仕組を説明すると、接続したい拠点にプライベート固定IPアドレスを割り振ったNVR700Wを設置し、そのNVR700WにLTEカードを指し電話機やFAXをつなげば、閉域LTE網を介して通信ができます。

なぜ、震災時に閉域LTE網で通信ができるかというと、LTE網に限定した閉域LTE網は公衆回線やインターネットに依存せず独立しているため、LTE網内に閉じられた閉域LTE網をプライベートで構築できれば、震災に強いネットワークを構築できるのです。

お勧めは社長宅、役員宅、本社、各拠点、工場など、災害時に電話で通信したいと思う拠点にNVR700Wを設置し、プライベート固定IPアドレスを割り振ってLTEで接続します。電話であれば、NVR700Wに電話機をつなげれば、災害時でもそうでなくてもいつでも電話ができます。災害時に100%の接続保証はできませんが、おそらく災害時でも通信ができるはずです。

なお、この構成は大阪市危機管理室でも採用されています。大阪市役所ではNVR700Wによる閉域LTE網のみならず、以下の図のようにIP-VPN網、地域BWA網を構築し、WANの三重化を行っています。事例の詳細はこちらをごらんください。

今回は、各拠点にNVR700Wを設置した閉域LTE網を紹介しました。ちなみにこの閉域LTE網は以下のように、FAX接続やPBX接続などの方法も取れます。

さらに応用例として、社長や役員の車にNVR700Wと電話機とシガレットソケット電源ケーブルを積んでおくと、社長や役員が車で移動している時に被災しても通信ができます。

ちなみに災害時は電源の確保も重要です。ソーラー充電器も用意されたほうがよいでしょう。NVR700Wで動作が確認されているソーラー充電器は日本電子工学のソーラーシステム「SunPortable」だそうです。同システムのフル充電時に、NVR700Wが約33時間動作することが確認されています。

震災時は早期対応が重要であり、ネットワークがつながらないと動きが取れない組織が多いはずです。震災時に電話やインターネットが使えない時でも、各拠点に1台11万8000円という安価なNVR700Wを設置することで災害に強いネットワークを構築できるのは、良い選択肢だと考えます。

震災時に通信できるということは、企業にとって重要です。公衆回線、インターネット、携帯電話、光回線がすべてつながらなくても、閉域LTE網は生きている可能性が高く、現実的な対策だと思います。